5月1日から、私は「教える側」から「教わる側」になる
来月末、4月30日。私は38年間勤めた定年退職の日を迎えます。 そして翌日の5月1日からは、時給換算で約1,300円、手取り11万円の契約社員として、再び店舗の床に立ちます。
昨日まで「店長」「マネージャー」としてパートさんたちにシフトの指示を出し、業務を教えていた私が、明日からは彼女たちと同じ、あるいはそれ以下の立場で現場を走り回ることになります。
「今まで偉そうに指示出しをしてきた手前、パートさんたちにどう接すればいいのか……」 「新しいシステムのレジ操作を、年下のスタッフに頭を下げて教わるなんて恥ずかしい」
そんな、59歳ならではの不要なプライドと恐怖心が、ふと頭をもたげることがあります。 しかし、長年店舗管理をしてきた私には、現場の最前線でトラブルを解決し、店を回している「最強の存在」が誰なのか、痛いほどよく分かっています。
それは、本部から来る偉い役員でもなく、私のような管理職でもありません。 現場を最前線で回しているのは、「愛嬌(あいきょう)」という最強の武器を持った、ベテランのパートさんたちなのです。

「論理」ではなく「愛嬌」がクレームを鎮火する
店舗で理不尽なトラブルが起きた時や、レジが長蛇の列になってお客様がイライラし始めた時。 管理職である私が「ただいまシステムエラーで〇〇の対応をしておりまして…」と論理的に、かつ神妙な顔で説明しても、お客様の怒りの炎はなかなか消えません。
しかし、ベテランのパートさんが、 「お待たせして本当にごめんなさいね〜! 今すぐやりますからね、いつもありがとうございます!」 と、満面の笑みと心からの声かけ(愛嬌)で対応すると、不思議なことにお客様の表情がフッと緩み、「まあ、急いでないからいいよ」と許してくれるのです。
現場において、小難しい理屈や過去の役職なんて何の役にも立ちません。 「この人には敵わないな」「この人が言うなら許してやろう」と思わせる『愛嬌』こそが、スーパーの現場における最強の生存戦略なのです。

9歳・元管理職が身につけるべき「愛嬌」の3ステップ
5月からの再雇用で手取り11万円になっても、職場で腐らず、周囲から愛される「最強の黒子」になるために。私がパートさんたちの背中を見て学んだ「オヤジの愛嬌の作り方」を3つにまとめました。
① 誰よりも先に、自分から明るく挨拶する
「元店長」というプライドが邪魔をして、相手から挨拶されるのを待っていませんか? それは今日から捨てましょう。 出勤したら、年下の上司にも、学生アルバイトにも、自分から「おはようございます!」と明るく声をかける。これだけで「あ、この人は役職を降りても付き合いやすい人だ」という安心感を周囲に与えることができます。
② 「ありがとう」と「ごめんなさい」を1秒で言う
管理職時代は、ミスを認めることに抵抗があったかもしれません。しかし、現場の担当者に戻ったら、言い訳は一切無用です。 教えてもらったら、即座に「ありがとう!助かったよ」。 ミスをしたら、即座に「ごめんなさい!次から気をつけます」。 この素直さ(愛嬌)を持った50代を、邪険に扱う人はいません。
③ 知ったかぶりをせず「これ、教えてくれない?」と頼る
これが一番難しいかもしれませんが、最も効果的です。 「俺は昔からこの店を知っている」というオーラを消し、「新しいレジの操作、よく分からないから教えてくれない?」と、思い切って年下やパートさんに頼ってみるのです。 人は、頼りにされると悪い気はしません。「しょうがないなぁ、元店長!」と笑いながら教えてもらえる関係を築けたら、あなたの再雇用生活は勝ったも同然です。

まとめ:愛嬌は「心を守る防具」である
手取り11万円という給与明細を見れば、誰だって会社へのモチベーションは下がります。 しかし、だからといって職場で不機嫌な顔(仏頂面)をして働いていれば、周囲から人が離れ、職場の居心地はさらに悪くなり、最終的には自分の心を激しく消耗させるだけです。
「愛嬌」とは、会社に媚びを売るためのものではなく、自分の心を守り、無駄なストレスを抱え込まないための「防具」です。
職場で愛される存在になれば、余計な人間関係のトラブルで疲労することなく、定時でサクッと帰れます。 そして、その温存した体力と精神力を、夜のブログ執筆やAIを使った動画制作、FPの勉強といった「本当の自分のビジネス」に全振りするのです。
4月30日。38年間着ていた「店長」という重い鎧は脱ぎ捨てます。 5月1日からは、「愛嬌」という最強の防具だけを身につけて、私は軽やかに現場へ戻るつもりです。
さあ、同世代の皆さんも、明日の朝は鏡の前で少しだけ口角を上げてから、職場へ向かってみませんか?


