毎年恒例の「ふるさと納税」、今年はちょっと待て
いよいよ来月末、4月30日に38年間勤め上げた職場を定年退職します。 そして5月1日からは、時給換算で約1,300円、手取り約11万円の再雇用生活がスタートします。
これだけ収入が激減するのだから、少しでも生活費を浮かせようと「ふるさと納税」で日用品やお米、お肉をもらおうと計画している同世代の皆さん。
ちょっと待ってください。定年退職の年に、去年と同じ感覚で「ふるさと納税」のポータルサイトを開くのは、自ら罠に飛び込むようなものです。
私は老後防衛のために「FP(ファイナンシャルプランナー)2級」の資格を取得しました。 そのFPの視点から、税金の残酷な計算式を読み解くと、私たちが今年陥りやすい「恐ろしいトラップ」が明確に浮かび上がってきます。
今回は、再雇用で給料が下がる50代・60代が絶対に知っておくべき、ふるさと納税の落とし穴とその回避術を解説します。

トラップ①:今年の「年収」は、あなたが思っているより遥かに低い
ふるさと納税の「寄付できる上限額」は、何で決まるかご存知ですか? それは、「その年の1月1日から12月31日までの、実際の合計年収」です。去年の年収ではありません。
私を例にして計算してみましょう。 去年までは、1年を通じて管理職としての給料をもらっていました。しかし今年は違います。
- 1月〜4月: これまでの給料(4ヶ月分)
- 5月〜12月: 時給1,300円の激減した給料(8ヶ月分)
これらを足し合わせたものが「今年の年収」になります。 つまり、1年の大半を「手取り11万円(額面でも15万円程度)」で過ごすため、今年の年収は、去年の年収から数百万円単位で暴落するのです。
年収が暴落すれば、当然ふるさと納税の「上限額」も激減します。 「去年は6万円まで寄付できたから、今年もとりあえず春のうちに6万円分買っておこう」とフライングしてしまうと、実際の上限額が3万円しかなく、「はみ出した3万円は、ただの超高級な自腹の買い物だった」という悲劇が起きます。

トラップ②:FP2級が暴く「退職金はノーカン」の罠
「いやいや、今年はドカンと『退職金』が入るから、年収はむしろ跳ね上がるはずだ。上限額も増えるでしょ?」
そう思ったあなた。ここがFPのテストでもよく出る、最大の落とし穴です。 結論から言うと、多くの場合、退職金はふるさと納税の上限額を1円も増やしてくれません。
以前の記事で、退職金にかかる税金の計算式(退職所得控除)について書きました。 私のように38年勤め上げた人間には、国から「2,060万円」という巨大な非課税のバリアが与えられます。
ふるさと納税の上限額を決めるのは、手元に入ってきた金額ではなく「税金がかかる対象の金額(所得)」です。 もしあなたの退職金が非課税バリアの枠内に収まっているなら、税務上、その退職金は「無かったこと(所得ゼロ)」として扱われます。
つまり、口座に何千万円振り込まれようが、税金の計算上は「単に給料が激減しただけの年」なのです。退職金をアテにして限度額を計算すると、完全に詰みます。

防衛策:定年の年は「12月の源泉徴収票」を見るまで動くな
では、定年退職の年はどうやってふるさと納税を活用すればいいのか。 FP2級を持つ私の結論は、極めてシンプルです。
「秋〜冬(できれば12月)になるまで、一切寄付をしないこと」
5月からの再雇用の給料がいくらになるのか、夏のボーナス(寸志)は出るのか。 こればかりは、実際に働き始めてみないと正確な数字は分かりません。
11月や12月になり、今年1年間の給料の着地点(見込み年収)がほぼ確定してから、ふるさと納税のシミュレーションサイトに「今年の正確な年収予想」を入力する。そして、算出された安全な上限額の範囲内で、お米や日用品などの「生活必需品」を確実に手に入れる。
これが、時給1,300円のサバイバル生活で、国から1円も搾取されずに制度を使い倒す、最も論理的で賢い生存戦略です。

まとめ:無知は罰金。知識は最強の盾になる
「周りがやってるから」「去年もやったから」 思考停止で行動することが、お金の世界では最も危険です。
手取り11万円の現実を前に、私たちは自分の頭で論理的に考え、行動しなければなりません。 FPの資格勉強は、決してただの暗記ゲームではありません。今回のように、自分の生活に直結するトラップを未然に防ぐための「最強の盾」なのです。
もうすぐやってくる4月30日の定年退職。 私はこの盾をしっかりと構え、罠だらけの再雇用生活という荒野へ、冷静に足を踏み入れるつもりです。
皆さんも、今年のふるさと納税のポータルサイトを開く前に、まずは自分の「今年のカレンダー」と「給与明細」をじっくりと見直してみてくださいね。
